長期修繕計画 ”標準様式” と ”作成ガイドライン” を知っていますか?

      2017/08/08

「標準管理規約」というものをご存知でしょうか?

国土交通省が作成した管理規約のモデル(ひな型)で、現在では多くの管理組合で利用されているものです。

標準管理規約が発表される(昭和57年)までは、それぞれの管理組合で独自に管理規約を作成していたため、形式がバラバラで、内容も不十分なものが多かったといいます。

さて、標準管理規約と同じような扱いで、長期修繕計画のモデルとして平成20年に発表されたのが、「長期修繕計画標準様式及び長期修繕計画作成ガイドライン」です。

平成25年度マンション総合調査では、管理組合における長期修繕計画の作成割合は、89.0%

計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて、修繕積立金の額を設定している割合は、46.0%となっています。

つまり、ほとんどの管理組合は長期修繕計画を持っているのですが、25年以上の計画期間に基づいて修繕積立金の額を設定している割合は半分以下ということです。

長期修繕計画は「あればいい」というものではありません。

必要な修繕項目、修繕周期、正確な数量・単価などが設定されてない場合、いざ大規模修繕を行おうとしたら、修繕積立金が全く足らなかったというような事態が起こりかねないからです。

そこで国土交通省は、長期修繕計画標準様式長期修繕計画作成ガイドラインを発表し、その利用を推奨しています。

今回は、標準様式作成ガイドラインを中心にまとめてみたいと思います。

 

1.長期修繕計画標準様式・長期修繕計画作成ガイドラインの制定

(1) 制定の背景

〇 計画修繕工事の実施には多額の費用が必要

修繕積立金が必要な分だけ積み立てられてないと、計画修繕が実施できない。

建物・設備の維持ができずに、マンションの資産価値が下がる。

〇 このような事態を避けるためには、長期修繕計画を作成し、

計画に基づいて、必要な費用を修繕積立金として積み立てておく必要がある。

〇 しかし、現状は不十分な内容の長期修繕計画が多いため、

修繕積立金の額が不十分で、計画修繕ができずに管理不全におちいる。

(2) 制定の目的

上記の状況を踏まえ、平成20年6月に国土交通省から、

適切な長期修繕計画の作成・見直し及びこれに基づいた修繕積立金の額の設定を促すこと
計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ること

を目的に「長期修繕計画標準様式及び長期修繕計画作成ガイドライン、同コメント」が発表されました。

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(3) 制定のポイント

管理組合等による長期修繕計画の内容の理解やチェック等を容易にするため、

作成者ごとに異なっていた様式について「標準的な様式」を策定した。

長期修繕計画の設定する推定修繕工事項目の漏れによる修繕積立金の不足を防ぐため、

標準的な「推定修繕工事項目*1」(大項目4・中項目19・小項目50)を示した。

将来の長期修繕計画の見直しによる修繕積立金の額の増加幅を少なくするため、

「均等積立方式*2」により修繕積立金の額を算出することにした。

*1 推定修繕工事項目

長期修繕計画において、計画期間内に見込まれる修繕工事等の部位、工種等による項目

*2 均等積立方式

長期修繕計画の計画期間中に積み立てる修繕積立金の額が均等となるように設定する方式

(4) 利用方法

分譲会社や管理組合は、標準様式とガイドラインを参考にして、長期修繕計画を作成または見直し、その計画に基づいて修繕積立金の額を設定する。

管理組合は、ガイドラインを参考として、その業務を専門家(管理会社、建築士事務所等)に委託(管理委託契約に含める場合を含む)し、作成された長期修繕計画の内容をチェックすることができる。

 

2.長期修繕計画の作成方法

(1) 長期修繕計画の構成

・マンションの建物・設備の概要等
・調査・診断の概要
・長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方
・長期修繕計画の内容(計画期間の設定、推定修繕工事項目の設定、修繕周期の設定、推定修繕工事費の算定、収支計画の検討)
・修繕積立金の額の設定

(2) 長期修繕計画標準様式の利用

標準様式を参考として作成する。

※なお、マンションには様々な形態、形状、仕様等があるうえ、立地条件も異なっていることから、これらに応じた適切な長期修繕計画とするため、必要に応じて標準様式の内容を追加して使用する。

(3) 計画期間の設定

新築マンションの場合  30年以上
既存マンションの場合  (見直した時点から)25年以上

(4) 推定修繕工事項目の設定

・標準様式第3-2号に掲げる項目を基本とする。(大項目4・中項目19・小項目50)
・マンションの現状に応じて項目を追加する。
・マンションのビジョンの検討結果などに基づいて、建物や設備の性能・機能を向上させる改修工事に関する項目を追加する。
・既存マンションの場合、工事項目は保管されている設計図書、現状の調査や診断の結果などに基づいて「推定修繕工事項目」として設定することとされている。
・例としては、屋根防水、床防水、外壁塗装等、鉄部塗装等、建具・金物等、共用内部、給水設備、排水設備、ガス設備、空調・換気設備などの大項目に分類され、それぞれの部所や設備ごとにさらに具体的な小項目が存在する。

(5) 修繕周期の設定

修繕周期とは・・・

劣化する建物の部位や設備の性能・機能を、実用上支障がない水準まで、経済的に回復させることができなくなるまでの期間をいう。

推定修繕工事項目ごとに、建物や設備の仕様や立地条件のほか、劣化状況等の調査・診断の結果に基づいて設定する。
※なお、設定に当たっては、管理組合の負担や経済性等を考慮し、推定修繕工事の時期の集約等を検討する。

(6) 推定修繕工事費の算定

・推定修繕工事項目ごとに、長期修繕計画用に算出した概算の数量に、調査データや実績等を基に設定した単価を乗じて算定する。

・推定修繕工事項目の小項目ごとに、「数量計算」は保管している設計図書、数量計算書、修繕等の履歴、現状の調査や診断の結果などを参考に、「建築数量積算基準」などに準拠して算出する(既存マンションの場合)。

・単価は過去の契約修繕工事の実績、専門工事業者の見積りなどを参考にして設定する。

(7) 収入の考え方

〇計画期間の収入

・修繕積立金
・専用庭等の専用使用料や駐車場等の使用料などからの繰入金(これらの管理に要する費用に充当した残金)
・修繕積立金の運用益
・分譲時の修繕積立金基金
・修繕積立金の総額不足などを理由とする一時金

〇計画期間の支出

・推定修繕工事費の累計額
(借入金がある場合)計画期間の償還金(元本と利息)を含める。

(8) 収支計画

推定修繕工事費等の累計額が、修繕積立金等の累計額を上回らないように計画する必要がある。
※機械式駐車場があり、点検や修繕に多額な費用を要することが想定される場合

→平置駐車場を含めて、管理費会計や修繕積立金会計とは区分して、駐車場使用料会計を設けることが望まれる。この場合、長期修繕計画も区分する。

 

3.まとめ

「標準管理規約」が多くの管理組合の管理規約のベースになったのと同じように、今後、「長期修繕計画標準様式」が管理組合の長期修繕計画のベースになってくると思われます。

内容は一見すると難しく感じるでしょうが、私は、基本的な修繕工事項目や周期などを一旦設定してしまえば、あとは管理組合でも長期修繕計画の管理は可能と考えています。

まずは、現在の長期修繕計画について、管理会社などに説明を求めてみることをお勧めします。

 

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