大規模修繕工事(1)基礎知識

      2017/08/06

建物は完成したときから、気象等の影響による経年劣化が始まります。

私が住む九州地方は、ここ数年はPM2.5の影響があり、せっかく大規模修繕工事で外壁を塗り替えたのに1年もたつと、黒いすすみたいなものが外壁を覆ってしまいます。自然現象は如何ともしがたいものです。

とはいえ、日常的な点検と計画的な修繕はおろそかにしてはいけません。点検と修繕の良し悪しがマンションの資産価値を左右するといってもいいすぎではないのです。

マンションはすでに飽和状態です。今後は、マンションの空家が問題になってきます。維持管理がされてないマンションは中古流通市場で相手にもされないでしょう。そうなると、空家が続出し、それが管理費・修繕積立金不足をもたらし、ますます修繕が行われなくなるという悪循環に陥ってしまいのです。

そこで今回からは、誰もが住んでみたいと思われるようなマンションをつくるために、マンションの維持修繕についてまとめていきたいと思います。

注)この話しの中心は、共用部分の維持修繕なので、ご自分のお部屋(専有部分)の 維持修繕もお忘れないようお願いします。

1.経常修繕・計画修繕

修繕の種類として、大きく分けると「経常修繕」と「計画修繕」があります。

(1) 経常修繕(日常修繕)

劣化の程度が小さく、その都度行う日常的な修繕(修理)をいいます。費用は比較的少額で、一般的には管理費でまかなわれます。

小さな不具合といっても、放置すると劣化が加速し、後日多額な修繕費がかかることもあるので、日常の点検と修理をしっかり行うことが大切です。

日常修繕の例 雨漏りなどの部分的な修繕
水漏れ事故など緊急時の修繕
共用部分の照明など各種機器の部品交換
共用部分の鉄柵や鍵などの軽微な修繕
共用部分の床や壁などの軽微な修繕
設備の破損など軽微な修繕
給水ポンプなど設備の不具合の対応

 

(2) 計画修繕

経常修繕に対し、建物や設備機器等を一定の時期(周期)に計画的に修繕していくことを「計画修繕」といいます。

マンションのような大規模な建築物には、たくさんの建築材料や設備機器が使われており、使われる部位、部材、機器によって劣化の進み具合は異なります。それぞれの材料や工法、機器などの特性に合わせて修繕周期の目安がガイドラインとして定められており、これにしたがって修繕の計画(長期修繕計画)を立てていきます。

計画修繕の例 外壁の塗装工事
エントランスなど共用部分の内装工事
鉄部などの塗装工事
屋上や屋根部分の防水層の修繕工事
バルコニーなどの防水工事
給水・排水管の補修工事
エレベーターの補修工事
機械式駐車場の補修工事

 

★「大規模修繕」とは、
長期修繕計画を踏まえて計画的に実施する「計画修繕」のうち、建物の全体又は複数の部位について行う大規模な修繕をいう。大規模修繕の主な目的は「修繕」だが、「改良」も行われる。                       修繕+改良=改修

 

2.修繕・改良・改修

修 繕 劣化や消耗が進んだり、建物の機能が失われた場合に、部材の補修(現状レベルを実用上支障のないレベルにまで回復させる)や取替えを行い、基本的には初期の性能レベルまで回復させることをいう。
改 良 建築や設備のグレード、機能又は性能が陳腐化して使用上又は居住上の問題がある場合に、当初の性能を超えて、あるいは新しい機能等を追加してレベルアップを図ることをいう。
改 修 技術等の進歩により、その時代に合わせて行う修繕及び改良をいう。特に、築後相当年数を経た建物の場合には、単なる修繕工事は少なく、改良を含めた改修工事が多くなる。

 

3.劣化の3要素

物理的劣化    (経年劣化) 外壁のひび割れや雨漏り、鉄部の錆びなど、経年による劣化によるものが物理的劣化。雨や空気中の炭酸ガスなどによる影響や、長年人が暮らすことなどによる損耗があげられる。
劣化診断は、物理的な劣化を定量的に把握することであり、この結果により修繕時期や修繕範囲、修繕方法などを検討することになる。
機能的劣化 建設後の技術の向上によって、建設時より優れた性能やよりコンパクトな設備機器・材料が開発され、その結果、当初設置された機器等の性能が低下していなくても、相対的な評価として、その機器が劣化(陳腐化)した状態になることが機能的劣化。法的な規制の変化によって、更新の必要が出てくる場合も含む。
例)冷暖房設備の高性能化・小型化、各戸の電気容量やコンセント数の増加。消防法の強化や新耐震設計法の施行等に伴う既存建物の不適格
社会的劣化 高度情報化、生活スタイルの多様化など、社会的なニーズが変わったことによって生じる劣化が社会的劣化。
例)住戸面積の増大、IT対応、建物外観の高級化等

上記の3要素が複合的に組み合わさって建物は劣化していきます。これらの組み合わせのバランスが、マンションの耐用年数に影響を与えるため、それぞれの部位、部材、機器別に修繕周期を定め、計画的に修繕を実施していきます。10年、20年周期で大規模な修繕工事が必要になってきます。

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縦軸は「性能」横軸は「経年」です。

時間の経過によって、初期性能は劣化していきます。途中、経常修繕で性能を回復させます。12年目程度で大規模修繕を行い、性能を回復させる。同時に改良を行い初期性能を上回る水準まで性能を上げます。あとはこのサイクルの繰り返しです。

4.計画修繕の実施状況

国土交通省マンション総合調査より
(マンション管理の実態を把握するための国土交通省が行う5年に1回の調査)

◆計画修繕を実施したマンション 

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※計画修繕を実施した組合は約70%ですが、これには、まだ大規模修繕を行う必要がない築10年未満のマンションが入っています。実際は99%以上のマンションが計画修繕を行っています。

◆計画修繕実施箇所(重複回答)

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◆工事費用の調達方法(重複回答)

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◆建物診断の実施状況

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