建物インスペクションと管理組合の関係(2)

      2018/07/03

 

前回からの続きです。

平成28年の宅建業法改正で宅地建物取引業者に新たに義務付けされた事項は、以下の3つです。

① 媒介契約書:媒介契約の締結時に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付すること。

② 重要事項説明:買主などに対して、建物状況調査の結果の概要などを重要事項として説明すること。

③ 契約書:売買などの契約の成立時に、建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付すること。

 ① 媒介契約書について 

 宅建業法は、不動産業者に媒介を依頼をした場合、報酬額(手数料等)をめぐり、業者と依頼者との間にトラブルが発生しないように、一定事項の書面化を義務付けています。(宅建業法34条の2第1項)

 その書面(媒介契約書)の記載事項に、今回新たに「建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項」が加わりました。

 具体的には、建物状況調査を実施する者をあっせん(手配)するかしないかの有無を記載することになります。

 ここでいう「あっせん」は、建物状況調査を実施する者を単に紹介するだけでなく、依頼者と建物状況調査を実施する者の間で、建物状況調査の実施に向けた具体的なやり取りが行われるように手配する(=あっせんのこと)ことが必要となります。

 ② 重要事項説明について 

「重要事項としての説明」とは、宅建業法35条1項に規定される「重要事項説明」のことです。

 重要事項説明は、取引物件や取引条件に関する重要事項を、契約締結前に事前に説明し、購入者等に対し、契約を締結するかどうかの判断材料を与えるためのものです。

そこで、既存の建物については、今回の改正で次の説明事項が追加されました。

㋐ 建物状況調査を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要の説明

㋑ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況の説明

ここは管理組合にも関係がある部分です。

 ㋐ 建物状況調査の実施の有無等について 

”国交省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」より抜粋”

〔建物状況調査の検査手順〕

<補足>住宅所有者等の承諾について

分譲マンションに係る現況検査の場合には、管理に関する事項を規約に 定めることが可能であることから、現況検査の実施や部外者の立ち入りについて 管理規約等において制限が定められていないか依頼主に確認してもらうことが必 要である。管理組合の承諾を必要とする分譲マンションの場合には、住宅所有者 等だけでなく管理組合の承諾も確認することが必要になる。

 

建物状況調査の調査対象は、建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分なので、共用部分がその調査対象になります。一つの専有部分の売却のために、共用部分が調査対象になるということです。

 そこで調査を実施する場合は、建物状況調査を要請する売主(区分所有者)やあっせんする不動産業者が、管理組合に直接または委託管理会社を通じて共用部分を調査することについて管理組合の承諾を求めてくることが考えられます。

 管理組合としては、好き勝手に共用部分に入られて調査させるわけにもいきませんから、管理員さんがいる時間帯での調査実施や売主(区分所有者)の同行を条件にする等、新たなルールが必要になることでしょう。

 また、調査事項はマンションの重要な情報なので、必要以上の情報の漏洩ないよう調査側と何らかの取り決めが必要になると思われます。

以上のことから、まずは理事会等で仮のルールを定めて、あらためて総会で建物状況調査あるいは部外者の立ち入りに関する細則を制定すればいいのではないでしょうか。

 

 ㋑ 建築及び維持保全に関する書類の保存について 

ここは、マンションの情報管理にも通じる問題です。

 宅建士の重要事項説明では、設計図書・点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものが保存されているか否かを説明することになります。

 そこで管理組合は、指定されている書類が保存されているか否かについて、媒介の不動産業者から問い合わせを受けることになります。

 まず、国交省が指定する書類ですが、以下のとおりです。

”国交省『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 別添3・重要事項説明の様式例』から”

 ・確認の申請書及び添付図書並びに確認済証(新築時のもの)

 ・検査済証(新築時のもの)

〔増改築等を行った物件である場合〕

 ・確認の申請書及び添付図書並びに確認済証(増改築等の 有 無 ときのもの)

 ・検査済証(増改築等のときのもの)

〔建物状況調査を実施した住宅である場合〕

 ・建物状況調査結果報告書

〔既存住宅性能評価を受けた住宅である場合〕

 ・既存住宅性能評価書

〔建築基準法第12条の規定による定期調査報告の対象である場合〕

 ・定期調査報告書

〔昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した住宅である場合〕

 ・新耐震基準等に適合していることを証する書類

 

 さて、これらの書類…管理組合は保管していますか???

 管理会社が保管しているんじゃないの?・・・ではいけませんよ~

 ちなみに、建物状況調査を実施する際にも、基本的なマンションの情報を書類において確認することになっているので、以下の書類についての閲覧申請が管理組合にある可能性があります。

※ これらの書類を必ず閲覧させる義務が規定されているわけではありませし、実務的にどれだけの書類の閲覧請求があるのかはまだ分かりませんが、少なくともこれらの書類が管理組合に保管されていることは確認しておきましょう。

”国交省「既存住宅インスペクション・ガイドライン」より抜粋”

  • 設計図書(新築時)
  • 改修工事の記録(設計図 書、内訳書等)
  • 建築確認済証
  • 完了検査済証又は特定行政庁が交付する建築確認 等に係る記録を証明する書類(「建築確認記載事項証明」「確認台帳記載事項証明」 等名称は行政庁により異なる)
  • 住宅性能評価書
  • 建物登記簿謄本
  • 共同住宅の場 合には管理規約、長期修繕計画等の書面の写し(これらの書類等が入手できな い場合には依頼主の申告等により確認する)

 

以上のように、管理組合の重要情報に関する書類の保管状況の確認や閲覧請求が管理組合にあることを考えれば、書類の保管や閲覧請求に関するルールがより重要になってくることが考えられます。

 ③ 契約書について 

この書面の交付は、もともと売買契約が成立したときに、不動産業者に義務付けているものですが、その書面の内容に、『既存の建物であるとき、建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者双方が確認した事項』の記載が追加されたものです。

 「当事者双方が確認した事項」とは、建物状況調査等、既存住宅について専門的な第三者による調査が行われ、その調査結果の概要を重要事項として宅地建物取引業者が説明したうえで契約締結に至った場合の当該「調査結果の概要」のことになります。

 要は、建物状況調査が実施された場合は、重要事項説明で説明された内容を、そのまま契約書にも記載するということでしょう。

 ここまで、建物状況調査制度の導入に伴う宅建業法改正について、宅建業者の義務とそれに関係する管理組合の対応についてみてきました。

 なにぶん制度がスタートしたばかりで、実務がどうなっていくかは分かりませんが、いまのところ管理組合が対応する必要があるものとしては、

  • 共用部分の建物状況調査実施の許可
  • 建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保管に関するする問い合わせへの回答

があると考えられます。

この建物状況調査・・・、実は目視のみの簡易な検査で、瑕疵の有無や住宅性能を判定するものでありません。しかし、ネガティブな調査結果となった場合には、購入希望者が購入をあきらめることにもつながります。そのようなネガティブな評価が建物状況調査によって積み重なるとすれば、マンションの資産価値にも大きく影響しかねません。

 管理組合としては、第三者からみても「良好な管理がなされている」と評価されるようなマンション運営を心掛けることががますます重要になってくることでしょう。  END…

 

 

 

 - 宅建, 管理組合の運営