建物インスペクションと管理組合の関係(1)

      2018/06/07

 

 今回は、宅建業法の改正で今年4月1日からスタートした「インスペクション=建物状況調査」制度について、書いていこうと思います。

 この制度は、これまで新築ばかりを推進してきた国が政策を大きく変え、中古住宅の流通を促していこうとする政策の一環として始まった制度ですが、マンションの管理組合にとって関係のない話ではなくて、マンションの中古住宅市場の活性化という目的も含まれていることから、マンションの資産価値を流通市場にいかにアピールするかが問われることになる制度でもあります。

 まずは宅建業法の改正の内容に触れながら、管理組合が関係することをピックアップしていきたいと思います。

 

 1. インスペクション(建物状況調査)とは? 

 

 inspection  インスペクション  視察、見学、検査、点検、監視

 

 既存住宅(中古住宅)の劣化・不具合を把握するための調査をいいます。

 少し詳しく言うと、「建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等」の劣化・不具合の状況を把握するための調査になります。

 下線の部分は、『住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)』や『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(履行確保法)』で瑕疵担保責任の対象となる部分と同じですね。

  • 構造耐力上主要な部分・・・住宅の基礎、基礎ぐい、壁などで当該住宅の自重、積載荷重などを支えるもののこと
  • 雨水の侵入を防止する部分・・・住宅の屋根や外壁、雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根や外壁の内部にある部分などのこと

ということになります。

 出典:国交省リーフレット

 国は「中古住宅の流通の促進のため」などと改正の目的を示していますが、要は、中古住宅を売りたい売主が、売った後で建物に瑕疵があったとして買主から損害賠償請求されないように、あるいは買主が瑕疵がある中古住宅をつかませられないように、事前に建物の現況調査をし、売主・買主がお互い納得の上で中古住宅の売買をしようというものです。

国交省「建物状況調査制度概要リーフレット」”より

■建物状況調査:売主側のメリット

売主が、売却する物件の調査時点における状況を確認することで、以下のようなメリットがあります。

  • 引渡し後のトラブル回避 取引後のクレーム等のトラブル回避に繋がります。
  • 競合物件との差別化が図れる 購入希望者に安心感を与え、他の売却物件と差別化ができます。

■建物状況調査:買主側のメリット

買主が、購入を検討する物件の調査時点における状況を確認することで、以 下のようなメリットがあります。

  1. より安心して購入の判断ができる 専門家の調査により建物の状況が把握でき、より安心して購入の判断をすることができます。
  2. メンテナンスの見通しが立てやすい 購入後のリフォームやメンテナンス等の予定を見込んだ取引が可能となります。

 

 2. 平成28年宅建業法改正 

 

 ところで、この「インスペクション」ですが、宅建業法の条文上は「インスペクション」ではなく、「建物状況調査」とされています。したがって、この記事では「建物状況調査」で話していきます。

 既存住宅の建物調査は以前から行われていましたが、今回の宅建業法改正では、取引を媒介(一般的には仲介と言いますが、条文上、「媒介」なので、これも「媒介」で話しをすすめていきます。)する宅建業者に対して、建物状況調査に関するいくつかの義務が課されることになりました。

 ここで誤解してはならないのが、今回の宅建業法改正で、宅建業者に建物状況調査を実施する義務が課されたわけではないし、売主・買主にも建物状況調査を実施する義務が課されたのではないということです。あくまで、売主や買主の意思によって(買主側から建物状況調査を依頼する場合は、売主の承諾が必要)、媒介する宅建業者以外の第三者(既存住宅状況調査技術者)が建物状況調査を実施するということを、まず押さえておいてください。

 さて、既存住宅を媒介する宅建業者に義務化されたのは次の3つです。

① 媒介契約の締結時に、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載した書面を依頼者に交付すること。

② 買主などに対して、建物状況調査の結果の概要などを重要事項として説明すること。

③ 売買などの契約の成立時に、建物の状況について当事者の双方が確認した事項を記載した書面を交付すること。

 

出典:国交省「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」概要

次回に続きます…

 

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