住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立 

      2017/08/14

既報のとおり、2017年6月9日に「住宅宿泊事業法」が成立しました。いわゆる民泊新法と呼ばれるものです。

これまでの「民泊」といえば、大きく分けて次の2つの種類がありました。

  • 旅館業法上の民泊(旅館業法の簡易宿所と呼ばれる種類になる)
  • 特区民泊(東京都大田区、大阪府、北九州市で国家戦略特区の中で行われている)

そもそも「民泊」というのは、個人の住宅の一室などを数日間、他人に宿泊させるものを指します。そこで宿泊料を徴収すれば営業とみなされ、旅館やホテルと同様、旅館業法上の許可を取らなければならないということになるのです。許可を取らなければ、それは違法民泊ということになります。

例えば皆さんのマンションの隣の住戸で民泊が行われているとすれば、最低限、旅館業の許可又は特区の認定がなされてなければ営業はできないことになります。

さて、今回の「住宅宿泊事業法」とは、これまでの旅館業法民泊及び特区民泊とは全く違うルール(法律)に基づいて行われます。簡単に言えば、民泊を規制することよりも、民泊サービスを手軽にどんどん進めていこうということに主眼が置かれているものです。

新法は、下位法令やガイドラインの準備・周知期間を経て、早ければ2018年1月に施行される予定になっています。そこで、今回は新法「住宅宿泊事業法」の概要についてまとめてみました。

1.住宅宿泊事業法の目的

訪日外国人旅行者が急増する中で、多様化する宿泊ニーズに対応し、現在普及が進む民泊サービスについて、その健全な普及を図るために、事業を実施する場合の一定のルールを定めること。

2.住宅宿泊事業法制定の背景

ここ数年、エアビーアンドビー(Airbnb)を始めとしたインターネットを活用した民泊サービスが世界各国で展開されており、日本でも急速に普及しています。

一方で、民泊サービスに起因した近隣トラブルも少なからず発生しており社会問題となっていることもあり、民泊サービスの提供に関して一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図ることが急務となっていました。

3.新法のポイント

  1. 年間の営業日数の上限を180日に制限
  2. 自治体が独自条例で営業日数を制限することが可能
  3. 住宅の家主に自治体への届出を義務化
  4. 仲介業者に観光庁への登録を義務
  5. 住宅の家主に標識掲示や名簿作成を義務化
  6. 法令違反した場合は業務停止命令や事業廃止命令が行われ、従わない場合6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰則

新法のポイントは、民泊物件の所有者(いわゆるホスト)らに届け出などを義務付け、違反者への罰則を設けた上で、営業を全国で解禁すること。また、年間営業日数の上限は180泊とし、生活環境の悪化が懸念される地域では都道府県や政令市などが条例により短縮できるようにすることです。

また、物件管理を所有者から委託された管理業者や、エアビーアンドビー(Airbnb)のような仲介業者には国への登録を課すことになりました。さらに、違反者に対する立入検査の実施や罰則(物件の所有者が虚偽の届け出をしたり、営業停止命令などに従わなかったりした場合、6カ月以下の懲役または100万円以下の罰金)も定められています。

4.住宅宿泊事業の2類型

住宅宿泊事業法は、民泊の形態を「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型(ホスト不在型)」に区別した上で、ホスト(物件所有者)、管理業者、仲介業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が、住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築するとしています。

① 家主居住型(ホームステイ型)

「家主居住型(ホームステイ型)」の民泊とは、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいいます。

この「家主居住型」では、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能です。そこで、住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するに当たり、都道府県知事又は保健所設置市等への届出を行うことになっています。

② 家主不在型(ホスト不在型)

一方で、 「家主不在型(ホスト不在型)」民泊については、家主居住型に比べ、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確になります。

そこで、「家主不在型」民泊については、届出を行うだけでなく、住宅提供者が「住宅宿泊管理業者」に管理を委託することを必須とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保するとしています。

5.住宅宿泊事業者

法律では、「住宅宿泊事業(いわゆる民泊サービス)」とは、旅館業の許可を受けて旅館業を営む者以外の者が、宿泊料を受け取って、住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものと位置づけられています。(住宅宿泊事業法2条3項)

住宅宿泊事業を営む場合には、都道府県知事へ届出をすることが求められています。(3条)この届出をして住宅宿泊事業を営む者を「住宅宿泊事業者」といいます。(2条4項)

住宅宿泊事業者(ホスト) ⇨ 180日以内の営業 & 都道府県知事への届出

6.住宅宿泊管理業者

住宅宿泊事業者は、届出住宅の居室の数が一定の数を超えるとき又は届出住宅に人を宿泊させる間不在となるときには、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないとされています。(11条)この委託を受けて、報酬を得て住宅宿泊管理業務を行う事業を「住宅宿泊管理業」といいます。(2条6項)

住宅宿泊管理業を営むためには、国土交通大臣の登録が必要とされており、(22条1項)この登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者を「住宅宿泊管理業者」といいます。(2条7項)

なお、国土交通大臣の登録を受けずに住宅宿泊管理業を営んだ場合には、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処せられます。(72条1項)

家主不在型民泊における「住宅宿泊管理業者」には、宿泊者の衛生の確保、宿泊者の安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保、宿泊者名簿の備付け、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明、苦情の処理、届出住宅の維持保全に関する業務が求められるかと思います。

現在は、民泊代行業者が何ら登録を行うこと無く民泊代行(民泊管理業)を実施していますが、民泊新法が施行された後は、国土交通大臣の登録を受けなければ住宅宿泊管理業を実施できません。

家主不在型民泊 ⇨ 住宅宿泊管理業者に管理を委託(義務)

住宅宿泊管理業者 ⇨ 国土交通省の登録(義務)

7.住宅宿泊仲介業者

住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならないとされています。(12条)

旅行業の登録を受けた旅行業者以外の者が、報酬を得て、宿泊者や住宅宿泊事業者のために、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする事業を「住宅宿泊仲介業」といいます(2条9項)が、住宅宿泊仲介業を営むには観光庁長官の登録を受ける必要があり(46条1項)、この登録を受けて住宅宿泊仲介業を営む者を「住宅宿泊仲介業者」といいます。(2条10項)

旅行業法の登録を受けず、また、観光庁長官の登録を受けず住宅宿泊仲介業を営んだ者は、100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。(旅行業法29条1号)

以上のように、住宅宿泊仲介業(民泊仲介サイト)に対する規制ができましたので、今後は、「ヤミ民泊」をあっせんする住宅宿泊仲介業者は法施行後には排除されることになるわけです。

住宅宿泊仲介業者 ⇨ 観光庁の登録(義務)

8.民泊に関する相談窓口

民泊に関するルール、関係する官公署は多岐に渡るため、民泊に関する相談や苦情を受け付ける専用窓口観光庁が新設する見通しです。

具体的には、空き家などに旅行者を有料で泊める「民泊」について、観光庁は騒音などの苦情や開設手続きなどの相談を一括して受け付ける専用窓口を設ける方針を固めています。民泊の基本的なルールを定めた新法の施行時期をめどに開設する予定です。

民泊を巡る相談・トラブルについては、今後、窓口を一元化してトラブル防止や民泊の適正化につなげるということです。

◎民泊の相談窓口 ⇨ 観光庁

9.まとめ

「民泊新法」に基づく民泊ビジネスは、届出だけで実施ができるため、参入障壁がとても低くなっています。住宅宿泊事業は、住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものです。

「一定の要件」を超えて実施されるものは、「住宅宿泊事業」の対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要となりますので、要注意です。すなわち、年間180日を超えて民泊を実施する場合には、現在と同様に旅館業許可を得るか、特区民泊の届出をする必要があります。

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